当記事では、日本語文法における「謙譲語」について解説していきます。
謙譲語の意味や種類、用法などをわかりやすくご紹介しますので、ぜひおさらいしていって下さい。
また日本語文法の全体像は下記の記事で解説していますから、謙譲語だけでなく全体的におさらいしたい方は、併せて参考にしてください。
謙譲語とは
謙譲語とは、相手を立てるために「自分を下げる」ようなニュアンスをあらわす日本語表現の一つ。文法的な区分では、尊敬語や丁寧語と並ぶ「敬語」の中の一つです。
例文を用意しました。
- よろしければ差し上げます。
- 拝見します。
- 存じ上げます。
上記例文の「拝見する」は「見る」の謙譲語であるように、元々の言葉からガラッと言い回しが変わる表現も多くありますので、ある程度の暗記も必要です。
しかし謙譲語は実に日本的で、なおかつ素敵な表現ですので、ぜひ適切に使えるようになっていきましょう。
謙譲語を使うシーン
謙譲語は「相互尊重」の考え方をもとに、その場の人間関係やシチュエーションに応じて使うものです。
そもそも謙譲語を含む敬語表現は、あくまで自己表現の一つとして使用すべきだと考えられており、当サイトとしても同じ意見を持っています。
敬語は,その場の人間関係や場の状況に対する気持ちの在り方を表現するものである。
出典:文化庁『敬語の指針』
要するに「この人には使いたいから使う、この人には使いたくないから使わない」といった固定的な考えで使用するものではなく、自分がその場をどう捉えているか表現し、コミュニケーションを円滑にするために用いるべきものです。
これはもちろん、文章執筆の現場でも同じです。
仕事として文章を納品する場合はもちろん、ビジネスメールやオウンドメディアの記事などでも「その場や、伝える相手(読者)に対して適切な謙譲語」を使うことを心がけていきましょう。
謙譲語の種類と用法、具体例
謙譲語の種類と用法について解説していきます。
そもそも謙譲語は、自分や身内の行動に対してのみ使う言葉です。もしも第三者の行動に対して使った場合、その方を下げるようなニュアンスになりますので、重々注意して使いましょう。
そんな謙譲語は「特定形」と「一般形」の大きく2種類に分けられますが、その判断基準は単純です。
- 特定形の謙譲語…元の言葉からガラッと変わる
- 一般形の謙譲語…元の言葉に「お」や「ご」をつける
このように、言葉の成り立ちがまったく変わります。順番に見ていきましょう。
特定形の謙譲語
まずは元の言葉とまったく違う表現になる「特定形」の謙譲語をご紹介します。
これらは「動詞」から変化するものなのですが、特に規則があるわけではありませんので、一覧表で用意しました。
元の単語 | 謙譲語 |
---|---|
尋ねる・訊ねる・聞く | 伺う |
言う | 申し上げる |
知る | 存じ上げる |
する | いたす |
あげる | 差し上げる |
もらう | いただく |
会う | お目にかかる |
見る | 拝見する |
借りる | 拝借する |
見せる | ご覧にいれる |
私 | わたくし |
我々 | わたくしども、手前ども |
妻 | 家内 |
息子 | せがれ |
上記例が基本的な「特定形」の謙譲語です。覚えておいて下さい。
一般形の謙譲語
次に、単語の頭に「お」や「ご」をつける「一般形」の謙譲語について見ていきましょう。
この用法は主に「動詞が転じて名詞になった言葉(転成名詞)」にて使われますので、例としていくつかご紹介します。
ご連絡、お返事、お電話、お届け、お誘い、など
なお丁寧語の一種である「美化語」も同じように「お」や「ご」を使う言葉ですが、少々ニュアンスが異なります。
- 謙譲語:敬う気持ちを伝えるため、相手に対して使う言葉に「お」や「ご」をつける
- 美化語:丁寧に表現するため、単語に「お」や「ご」をつける(ご飯、お米など)
混同しないようにしましょう。
謙譲語を使うときは、二重敬語に注意
また謙譲語を使うときには、ぜひ二重敬語にも注意して下さい。
二重敬語とは、同じ種類の敬語を同じ言葉に対して重ねて使っている日本語表現のこと。人によっては「失礼だ」と感じることがある表現ですので、できるだけ避けるべきだとされています。
謙譲語の二重敬語を使うと、以下のような文になります。
- ご連絡させていただきます
- 喜んでお受けさせていただきます
これらは全て二重敬語です。
下記の記事では「二重敬語」の細かいルールや、勘違いしがちな「敬語連結」との違いについても解説していますので、自信のない方はおさらいしておいて下さい。
まとめ
謙譲語は、相手に敬意をあらわすための大切な表現です。
誤って使うとかえって相手に対して失礼になってしまう恐れもありますので、適切な言葉遣いができるよう、おさらいしておきましょう。
下記の記事では敬語の全体像を解説していますので、ぜひ参考にして下さい。