日本語で文章を執筆する際には「話し言葉(口語)」と「書き言葉(文語)」の違いを知っておく必要があります。
一般的にフォーマルな文章を書くときには「書き言葉」を。それ以外の文章で親しみやすさや読みやすさを重視するなら「話し言葉」を使います。
しかし例えば「ビジネスメール」などでは、ときに話し言葉と書き言葉が混在せざるを得ないケースもあります。
取引先へのメールで書き言葉の「だが・しかし」などを使うと失礼に当たりますが、一方で「でも」「だけど」などの話し言葉は稚拙な印象を与えかねません。
状況ごとに自分で取捨選択できるよう、話し言葉と書き言葉についての理解を深めておいてください。
「話し言葉(口語)」と「書き言葉(文語)」の違い
話し言葉(口語)と書き言葉(文語)の違いを考えたときは、読者に与えるイメージが焦点になります。
まず話し言葉は、普段の会話で使う言葉で「口語(こうご)」とも呼ばれます。親しみがあり、耳馴染みも良いため「読みやすさ」を重視した文章で使われます。ただし読者には少なからず稚拙な印象を与えるため、使いどころには注意しましょう。
一方で書き言葉は、ビジネスシーンや面接などのフォーマルな場で使われる言葉で「文語(ぶんご)」とも呼ばれます。わかりやすさよりも「信頼感」を重視した文章で使われることもあり、少なからず「読みにくい」と感じる読者も出てきます。
話し言葉と書き言葉の使い分け方
話し言葉と書き言葉のどちらを使うべきか悩んだときは、まず読み手にどんな印象を与えたいのか、そしてどんな場に出す文章なのかを考えます。
基本的には「特定の相手に伝えるなら話し言葉。さまざまな相手に伝えるなら書き言葉」を選ぶと、多くの場合しっくりくる使い分け方になるように思います。
- 日記
- 友達や知り合いとの連絡
- 個人ブログ
- スタッフブログ
など
- ビジネス文書
- ライターの執筆原稿
- プレスリリース
- SEO記事
など
もっとも取り扱いが難しいのは「ビジネスメール」です。取引先を相手に「〜だ」「しかし」などと書くと偉そうで失礼に当たりますが、とはいえ「やっぱり」「けど」「全然」などの話し言葉は稚拙な印象を与えるため、使うべきではありません。
同じ「話し言葉」でも、使って良い言葉と適さない言葉が媒体ごとに変わってくるのです。
文章はかならず読む相手がいるものです。「仕事で書く文章は書き言葉、プライベートなら話し言葉。しかし相手に失礼のない表現を優先する」という使い分け方をすると良いでしょう。
「話し言葉(口語)」と「書き言葉(文語)」一覧表
「話し言葉」と「書き言葉」の対比がわかる一覧表を用意しました。
特に原稿執筆の際、ライターとして手癖で使ってしまいやすい言葉を太字にしました。迷ったときは、以下表を参考にしてください。
言葉の種類 | 話し言葉(口語) | 書き言葉(文語) |
---|---|---|
接続詞 | なので/ので/だから/ですから | そのため/ため |
接続詞 | でも/だけど/ですが | しかし/だが |
接続詞 | けど/けれど | が |
接続詞 | たら/れば | であれば |
代名詞 | こっち/そっち/あっち/どっち | こちら/そちら/あちら/どちら |
形容動詞 | こんな/そんな/あんな/どんな | このような/そのような/あのような/どのような |
形容動詞 | こんなに/そんなに/あんなに/どんなに | これほど/それほど/あれほど/どれほど |
副詞 | なんで/どうして | なぜ |
副詞 | やっぱり | やはり |
副詞 | 全然 | 全く |
副詞 | 全部 | すべて |
副詞 | 一番 | もっとも |
副詞 | たぶん | おそらく |
副詞 | 絶対に | かならず |
副詞 | いつも | 常に |
副詞 | とても/とっても/すごく/ものすごく | 非常に |
副詞 | ちょっと | 少し/わずか |
副詞 | だいたい | およそ/約 |
副詞 | たくさんの/いっぱい | 多くの/豊富な |
副詞 | もっと | さらに |
副詞 | だんだんと | しだいに/徐々に |
副詞 | やっと | ようやく |
副詞 | ちゃんと | きちんと |
実際の執筆の現場では、もっとも修正対象になることが多いのは「副詞」の話し言葉かもしれません。
一方で接続詞まわりでは、例えば「です・ます調」の文章で使っている「ですが」「ですから」を、無理に「だが」「そのため」に直す必要があるのかというと、意見が分かれるところです。
分類は知っておきながらも、実際に使う言葉はトンマナや読者に与えたい印象によって選べると良いでしょう。
話し言葉の種類と、書き言葉へ直す方法
多くの話し言葉を一覧表にまとめましたが、注意すべきはそれら決まりきった言葉だけではありません。
要するに「読む相手にとって信頼感のある言葉を使いましょう」というのが、話し言葉や書き言葉の概念が存在する主旨です。
その観点で取捨選択しながら、以下のような言葉も書き言葉に修正してみてください。
余分な言葉
表現に迷って余分な言葉をつけてしまい、話し言葉感を強くしているケースがあります。
「なのです」「になります」などが定番で、それぞれ「です」で問題ありません。
話し言葉 | 書き言葉 |
---|---|
Aになります | Aだ/です |
Aだったりします | Aだ/です |
Aとかです | Aだ/です |
削れる文字は削った方が、よりフォーマルな印象を与えられます。
ら抜き言葉
ら抜き言葉も、話し言葉の定番です。
特に「寝れる」「着れる」などは、そうと気づかず原稿で使ってしまいやすい言葉です。
- サラッと着れる→サラッと着られる
- ぐっすりと寝れる→ぐっすりと寝られる
ら抜き言葉は全般的に修正対象になることが多い言葉ですから、意識して執筆していきましょう。
い抜き言葉
い抜き言葉は、ビジネスメールなどで使ってしまいやすい話し言葉です。
「〜しています」を「〜してます」と表現すると、少なくとも上司や取引先には失礼に当たりますから、確実に直せるようにしておきましょう。
- いまは報告書を書いてます→いまは報告書を書いています
- まだ着手してません→まだ着手していません
意識していれば気付ける範囲だと思いますから、確実に直せるようにしておきましょう。
さ入れ言葉
丁寧に伝えようとして逆効果になるのが「さ入れ言葉」です。
謙譲語からさらにへりくだろうとすると、かえって稚拙な表現になってしまいます。
- お目にかからさせて頂きます→お目にかかります
- 伺わさせて頂きます→伺います
これは二重敬語に類する誤った表現です。併せて下記の記事もご参考ください。
曖昧表現
自信がないときに使ってしまう曖昧表現も、意図せず話し言葉になってしまう例です。
話し言葉 | 書き言葉 |
---|---|
Aだと思います | Aだ/です |
Aなのかもしれません | Aかもしれません |
Aみたいなものです | Aだ/です |
Aのような感じで | Aのように |
言葉はできるだけ言い切ることで、書き言葉に近いフォーマルな表現になります。
跳ね言葉
跳ねるようなニュアンスを含む言葉も、特に執筆に慣れていなければ使ってしまいやすい傾向にあります。
「〜なんです」など、親しみを持たせるために用いられやすい表現ですが、少なくともプライベートの連絡以外では「書き言葉」に直すことをおすすめします。
話し言葉 | 書き言葉 |
---|---|
なんです | です |
だったんです | でした |
親しみやすさよりも、どちらかというと稚拙な印象を与えやすい表現です。
まとめ
話し言葉と書き言葉は、意外と取捨選択が難しい概念です。
では常に書き言葉だけを使えば良いのかというと、それでは上手く情緒が伝わらない場面もあります。相手によって、あるいは媒体によって、細かく選ばねばなりません。
それも「文章力」の一つだと思いますから、ぜひその時に応じて適した言葉を使えるよう、使える表現を増やしていってください。