当記事では、日本語文法における「倒置法」について解説していきます。
倒置法の意味や種類、用法などをわかりやすくご紹介しますので、ぜひおさらいしていって下さい。
倒置法とは
倒置法とは、一般的な文からあえて語順を入れ替えて表現する文章術のこと。修辞法(レトリック)の一種で、文の印象を操るために用いられる記法です。
例文を用意しました。
僕は書く、文章を。
普通の語順だと「僕は文章を書く」となりますが、あえて語順を入れ替えることで印象深い文になっています。
このような文章術を、倒置法と呼びます。
倒置法の用法と具体例
倒置法の用法は、主に3パターンに分けられます。それぞれ具体例を見ていきましょう。
伝えたいメッセージを強調する
倒置法を用いて述語と修飾語を入れ替えることで、文の中でも特に伝えたいメッセージを強調できます。
僕はニコラ・テスラを尊敬している。
↓
僕は尊敬している、ニコラ・テスラを。
上記のように語順を入れ替えると、普通に伝えるよりも「ニコラ・テスラを」尊敬しているということを強調できます。
文の余韻を残す
倒置法を会話文に用いることで、なんとなく情緒を感じさせるような、余韻を残す効果も狙えます。
「あなたのことがずっと好きでした」
↓
「あなたのことが好きでした、ずっと」
上記のように倒置法を用いることで、少し後を引くような印象の文に組み替えられます。
語気を強める
倒置法を用いて「強い意味を持つ修飾語」を文末に持ってくることで、語気を強めるような文も作れます。
「絶対に忘れないでくださいね」
↓
「忘れないでくださいね、絶対に」
上記のように言葉の意味や語感の強い修飾語を文末に持ってくることで、念を押すような語気の強い文になります。
倒置法がよく用いられるシチュエーション
倒置法は、実は一般的なWebコンテンツやブログ、ビジネスメールなどには適しません。
適したシチュエーションというものがありますので、使い所を間違えないようにしましょう。
キャッチコピー
倒置法はその「文の印象を操る」という特性上、キャッチコピーにもよく用いられます。
- 向き合って、そのさきへ(三越伊勢丹ホールディングス)
- 会いに行こう。思うよりも、待つよりも。(東京メトロ)
倒置法は、印象深いコピーを作る一つの手段です。
小説
小説の一節や会話文でも、よく倒置法が使われます。
写真屋へ来る道とはちがって、ふたりはきゅうに大人になり、夫婦のような気持ちで帰っていくのだった。 傘についてのただこれだけのことで ―。
川端康成,2008年,筑摩書房,『雨傘』
特に文学的な表現の得意な作家さんが、よく使う傾向にあります。
歌詞
曲の歌詞にも、よく倒置法が使われます。
- どれくらいの値打ちがあるだろう?僕が今生きているこの世界に(Mr.Children『HANABI』)
- 上を向いて歩こう、涙がこぼれないように(坂本九『上を向いて歩こう』)
印象深い文を作れますので、歌詞には倒置法がぴったりですね。
俳句
俳句でも、倒置法がよく使われます。
- 閑さや 岩にしみ入る 蝉の声(松尾芭蕉)
- やれ打つな はえが手をする 足をする(小林一茶)
情緒的な印象をあらわせますので、俳人の間ではよく使われる技法です。
まとめ
倒置法は、上手く使うと文章の印象を思いのままに操れるテクニックです。
普段の文章には向きませんが、キャッチコピーや小説、歌詞、俳句などを書く機会にはぜひ取り入れてみて下さい。